はじめに
日本の食料自給率は40%まで落ち込み、今では1億2千万人の国民の7千万人分は外国に頼るという異常な事態になっています。農業・食糧生産は、世界的食糧難が指摘され、21世紀に向けて日本民族の存立の基盤にかかわる重大な課題です。さらに、地域と地球的規模での環境問題が大きな問題になってるいま、「開発至上主義」を改めることが緊急課題です。こうした中で環境に優しい農業の発展をはかることは、環境問題にとっても大きな役割を果たします。
いまや、食料自給率の向上にとりくむことは国政でも、地方政治でも緊急不可欠の課題です。国の政治では、第1に農業予算を土木事業偏重から所得保障、価格保障中心に抜本的に組み直すこと、第2に次期WTO(世界貿易機関)交渉にのぞむにあたって米を輸入自由化の対象からはずすよう強く交渉にのぞむこと、が必要です。
日本共産党は、党綱領に「農業を基幹的な生産部門として位置づけ、日本農業と農民経営の発展を保障する民主的な農業政策のためにたたかう」ことをかかげ、農業と農家の発展のために、これまでもいくつかの政策を発表してきました。今日、農業・食料問題がいっそう重要になっているなかで、国政での農業政策の根本的な転換を求めると同時に、石川県農業の発展のためになにが必要か、日本共産党の提案を発表します。
(一) 石川県農業の現状――大きな後退とその原因
石川県農業は重大な困難に直面しています。95年の農家戸数は80年の67%、95年の農地面積は80年に比べて81%に減少しています。新規農業者はここ10年間毎年10〜20人台にとどまっています。基幹的農業従事者の年齢構成は、82年では60歳未満が70%を占めていたのに、94年には、60歳未満が30%台と高齢化が激しく進行しています。県内市場における県内産の占有率は、野菜全体で77年の45%から27%に減少し、だいこんは70%から31%と半分以下になっています。
農家のみなさんの大きな努力にもかかわらず、石川県農業はなぜこれほどまでに深刻な事態に追い込まれたのでしょうか。政府の農業予算のうち農産物価格保障対策費が80年では25%であったのに現在はわずか8%に削減されたことが大きな原因の1つです。農産物とりわけ米の価格保障対策の後退・撤廃は、農業経営をいっそう不安定にしています。こうした政策は、中山間地、条件不利地での耕作放棄を拡大し、農地の荒廃、国土保全、環境問題などを激しくしています。1996年、石川県が策定した「石川の農業・農村・食料ビジョン」は、価格政策を柱にすえていないなどの弱点の、石川農業の発展には有効な力をもちえませんでした。99年7月に成立した「食料・農業・農村基本法」(新基本法)は、国内生産の維持と農民経営の安定に不可欠な農産物価格政策から市場原理主義を徹底させるなど農家経営と食料生産にさらに大きな打撃を与えることは必至です。米の強制減反と輸入自由化は、米農家が中心の石川県農業の根幹をゆるがしています。
(二)県農業の発展のために
(1) 米価を安定させ、米農家の経営をまもる
石川県は、農地の84%が水田利用です。従って、生産費をつぐなう米価の安定は第1の課題です。ところが、政府は米の輸入を拡大しながら、米価格暴落の責任を農家に押しつける政策をとっています。2000年産米の政府買い入れ価格は99年産米より2・7%引き下げられ、25年前の水準に逆戻りしました。さらに、「新たな米政策」は、豊凶変動の責任を全面的に生産者に押しつけ、60sあたり600〜1,200円程度の飼料用として処分させようとするものです。
日本共産党は次の提案をします。
1つは、米の輸入をやめるか、大幅に削減し、輸入米は海外援助にまわすことです。95年からはじまった米輸入は、年々ふえいまや年間70万トンを超え、かなりの部分が主食用・加工用にまわされ、国内産米価格を大きく圧迫しています。
もう1つは、大手スーパーなどによる買いたたきをやめさせることです。米が市場にまかされ、量販店などが乱売合戦をくりひろげ、資本力を背景にコストを無視した低価格をおしつけています。これを野放しにしては、農家がいくら減反しても米価下落をとめるのは困難です。当面、政府が昨年廃止した、米価の変動を一定におさえる制度(値幅制限)を復活させるべきです。
より根本的には、政府による米価下支え制度を確立することです。欧米では農産物について今日でも最低価格保障を維持しています。政府の農業予算のなかでも価格保障に使う分の割合を引き上げれば、米価の下支えは十分可能です。
石川県産の自主流通米の価格は新潟、富山産米よりかなり下回っています。県は、米づくりへの技術援助を強めるとともに石川県産米のPR強化を図るべきです。
(2) 麦、大豆生産の発展のために
「新しい米政策」は、麦・大豆を本作(転作ではなく)として生産振興をはかる、としています。しかし、石川県の麦の作付は、90年2000ヘクタール近くだったものが98年で500ヘクタール、そのうち300ヘクタールは河北潟干拓地の作付けです。大豆の作付面積は、90年で約2500ヘクタールだったものが98年には2000ヘクタール以下です。こうした現状からみれば、単に「麦・大豆を本作に」といっただけでは問題は解決しません。
水田に麦や大豆、飼料作物などの作付けが拡大できれば自給率向上に寄与することになります。そのためになにが必要か、日本共産党は次の提案をします。
第1は、価格保障政策の確立です。政府は麦・大豆・飼料作物に「新たな助成システム」をつくり、それによる最高助成額は7万2000円(10アール当り)になるから生産拡大ができる、としています。しかし、最高額の助成が受けられるのは、4ヘクタール以上の団地であることなど厳しい条件に当てはまるところは、めぐまれたほんのわずかな地域と農家でしかありません。麦・大豆作付け拡大ができるような価格保障を政府に求めるとともに、石川県が独自の価格保障制度をを創設することが重要な課題です。規模拡大などを条件とするのではなく、麦・大豆の生産に意欲を持つ農家ならだれでも対象になる県独自の価格保障制度は、麦や大豆の作付けをふやし、自給率向上につながります。公共事業偏重の石川県の農業予算を価格保障政策にふりむければ、現在の県の農業予算でも独自の価格保障をする財源はでてきます。
第2は、農民の意見を尊重した生産基盤の整備と生産技術向上に、県が大きな援助を行うことです。
大豆・麦の作付けに適さない農地が残されています。こうした農地の基盤整備は、それぞれの地域の農民の意見を尊重し、農家負担を軽減するために県が特別の補助を行います。また、大豆・麦生産は天候に左右されやすくその栽培には、米とは違った技術が必要です。県は、農家への技術援助をつよめるためことが必要です。農家の栽培技術の指導などで戦後の農業発展に大きな役割を果たした農業改良普及所と普及員が大幅に削減されています。地域にあった作物の研究・普及体制を強化するために、試験場や普及所を充実させ、普及員の増員をはかります。
第3は、産直や契約栽培など、生産者と消費者による共同の取り組みを財政的にも支援します。
(3) 後継者育成に本腰をいれる
石川県内の新規就農者は、ここ10年間毎年30人以下にとどまっています。県内の市町村数で割れば平均1年間で1自治体0・5人程度です。中核農家6000人を維持することもできない人数です。石川県農業の発展のために、大量の後継者づくりは緊急の課題です。
日本共産党は、後継者づくりに次の提案をします。
第1に、なによりも大切なことは夢と展望がもてる農業にすることです。
そのために、農業を国の基幹的産業に位置づけて、食糧自給率向上を農政の中心課題にすえる政治が求められます。
第2に、米と主要作物の価格保障を確立することです。
農産物価格が市場原理万能主義で、生活に見通しがもてない状況では後継者は生まれません。
第3に、営農が軌道に乗るまで5年間、月15万円の後継者手当を支給します。
いまの県の就農支援資金、就農者育成資金などは2年程度の貸付です。これでは新規就農者の生活にとって極めて不十分です。後継者が就農して経営が安定するまでの一定期間の生活を支える制度を創設します。
第4に、専業の後継者だけでなく兼業の後継者対策をすすめることです。
いまある新規就農者の専業農家をめざす人だけが対象です。兼業農家は、現に、耕地や集落の荒廃を防ぎ、農業生産の重要な部分を担っています。専業農家だけで石川県農業を支え得ないことは明白です。兼業の後継者をも対象にすることが重要です。
(4) 中山地対策を充実する
政府は、中山地域への直接支払い制度を来年度から創設することを決めたことは、1歩前進といえます。しかし、政府案にはさまざまな弱点や矛盾がのこされています。現場の声を十分聞いて改善をすべきです。
日本共産党は、つぎの点の改善を提案します。
第1、 支払額の算出を平地との生産コスト差の8割としている点です。生産条件格差を残したまま生産継続義務を課すのは、中山間地域の農業・集落に大きな負担をおわせるものです。生産コスト差の100%を支払うのが制度の趣旨からみても合理的です。県は、政府制度との差20%分を支給する独自の対策をとるよう提案します。
第2、 転作政策との整合性がとれていないことです。一方公益的機能を有しているとして直接支払いを行いながら、そこに転作を押しつけるというのはどう考えても矛盾です。転作政策の見直しが行われてこそ、中山間地域の農地を維持することができます。
第3、 財政をだれがもつのか、という問題です。中山間地域の自治体は、総じて予算規模が小さく、厳しい財政事情にあります。国が全額財政負担をするよう提案します。
第4、 中山間地への直接支払いのための膨大な調査、事務の仕事が市町村の担当部署に集中しています。県は、市町村事務量の軽減のための援助を行うべきです。
(5) 野菜の県内自給向上のために
ある調査によれば、県内消費者の多くが、石川県の農業に対して「安全な食料の供給と味や新鮮さ」を期待しています。また、消費者は「出荷日・食べ方・旬の時期・農薬の使用状況」などの情報を求めています。しかし、県内市場における県内産野菜の占有率は低下し続けています。また、野菜や果樹の栽培面積、販売額も横ばいです。消費者ニーズに応えるために、県内産の野菜や果樹の生産量をふやします。県内販売を主眼とした多品種栽培を奨励します。そのために必要な最大の対策は、価格保障の充実です。すでに、全国的に市町村単位の価格保障対策を実施し、野菜栽培をのばしているところも生まれています。また、ハウス建設などに大胆な貸付、援助をおこなって成果を上げているところもあります。こうした全国的な経験を学び、野菜農家への支援をつよめます。生産者や農協を支援し、アンテナショップを金沢市など都市中心部にもうけます。県内産の米、野菜を学校給食や公立施設での利用を促進します。
(三) 財源について
政府の1999年度予算(当初)では3兆4056億円の1農林水産予算のうち兆7588億円、実に52%が公共事業に使われています。価格・所得関係費には1割程度しか使われていません。かつては農林水産予算の25%程度が農産物価格保障対策費ひ使われていたことからも大幅な後退です。農林水産予算の使い道をかえるー大型プロジェクト中心の公共事業中心から価格・所得関係費中心にかえれば、いまの農林予算の総額を増やさなくとも私たちの提案は十分実現可能なものです。石川県の1999年度農林水産予算は715億8,807万円で総予算の10・9%を占めています。農林予算のうち401億1,664万円、実に56・9%が公共事業に使われています。国以上の公共事業突出予算です。こうした予算のゆがみをただせば、私たちの提案を実現するに十分な予算を生み出すことが可能です。
力を合わせて「公共事業」優先の農林水産予算を農業と農家が必要とする予算を最優先する予算、農政を実現するために、力を合わせましょう。
以上
○石川県農業の発展のために−日本共産党の提案
2000年2月