日本共産党石川県委員会
金沢地区委員会
1. はじめに
今、全国各地で公共事業の見直しを求める世論が大きくなっています。とくに、ダムについては、環境保全の点からも河川管理の点からも根本的な見なおしを求める声が大きくなっています。石川県が建設中の辰己ダムもそうです。計画当初からいろいろな角度から建設反対の市民運動が続けられてきました。いまでは、21世紀環境委員会によって全国の無駄な公共事業の百のひとつに数えられるほどになっています。
今年4月から8月にかけて、公共事業評価監視委員会を舞台に市民団体と県土木部河川開発課の間で辰己ダム問題についていろいろな角度から議論が行われましたが、県当局は辰己ダム建設の合理的な根拠をついに示すことができませんでした。
公共事業評価監視委員会が最後の段階で「密室審議」にもちこみ、「辰己ダム建設事業の継続の方針は理解できる」という結論を出したことは、きわめて不当なことです。と同時に、監視委員会が「付帯意見」としてダム建設にあたっての五つの条件をつけたことは、ダム建設に反対する県民・市民の声を部分的に反映したものになっています。
日本共産党は、当初から辰己ダム建設反対の立場を明らかにし、市民運動と連携しながら県議会や金沢市議会で論戦を繰り広げてきました。これまでの到達点にたって、「県民、市民の世論で辰己ダム建設をやめさせよう」と呼びかけるものです。
2. 本当に必要なダムか、ダム建設計画そのものの再検討を
辰己ダムが計画されたのは1970年代の半ば、高度成長のさなかでした。全国各地で「日本列島改造」式の大型開発が行われた時期です。河川でも水道水確保や治水の名目でダムが計画され、貴重な自然や文化財が破壊されていきました。ゼネコンのために税金が湯水のように使われてきました。
いま、このような公共事業のあり方を根本的に見なおす流れが大きくなっています。河川についても、ダムによって治水や河川管理を計ろうとする方式から、集水域の適切な土地利用管理、森林や耕地の保全、洪水に強い都市計画の実施を治水の基本とする方向に変わりつつあります。また、公共事業の中でも自然環境や文化を大切にすることが求められています。このような点から辰己ダム計画は、根本的に再検討すべきです。
(1) 貴重な文化遺産や自然環境を破壊するダム計画
辰己ダムが建設されると辰己用水の取水口から約160メートルのトンネルが破壊されます。「辰己用水は、先人の英知と労苦によって寛永・文化・安政の各時代の先進技術を駆使して築かれたもので、土木技術の推移を知る上でも貴重な資料です。わが国の著名な用水が次々と消滅していく中で、辰己用水はほぼ完全な姿で350年間絶えることなく犀川の流れを自然流下によって取水し、高台の兼六園、市中へ清流を流しいきつづけています」(宮江伸一・元金沢大学工学部教授のパンフレットより)。
また、辰己ダム建設予定地の犀川渓谷は、都市近郊としては全国的にもまれにみる自然が豊かな地域です。ヤマセミやカワセミ、アカショウビンなどの貴重な鳥類が観察されています。暖地性シダ類であるイブキシダ、コモチシダの繁殖の世界最北限といわれています。 ダム建設によって貴重な文化遺産や自然環境を破壊してはなりません。
(2) ダム建設の根拠に大きな疑問
県は辰巳ダム建設の目的として、@洪水調節、A流水の正常な機能の維持、B発電をあげています。「洪水の調節」として「犀川大橋地点の流下能力は毎秒1,230立方メートルであるが、100年に一度の豪雨に対しては毎秒1,920立方メートルの流下能力が必要。既設2ダムと辰巳ダムを建設することによりこの差を調節し、犀川大橋付近から河口付近を洪水から守る」としています。
しかしこれには、大きな疑問があります。
まず、「100年に一度の大雨」が1時間あたり92ミリという計算にはデータの流用など重大な誤りがあり、犀川大橋地点での水量1秒間に1920立方メートルという数字にも根拠がないと民間の専門家は指摘しています。これについて、県当局はきちんと回答できないままです。
県当局は、辰巳ダムを計画するさいには犀川についてはそれまでよりはるかに大きな洪水量を想定しながら、金沢市内を流れるもう一つの大きな河川・浅野川については洪水量の見直しさえ行っていません。犀川については1時間あたり92ミリの降雨量を想定して対策を立てているのに、浅野川についてはそれよりはるかに小さい降雨量しか想定していないというのはどういうことでしょうか。辰巳ダムの「必要性」にあわせて雨量・洪水量が恣意的に操作されたのではないかと疑わざるをえません。
1996年と98年に高畠地区で水害がおきました。県や金沢市は辰己ダムが抜本的な水害対策であるかのように宣伝していますがちがいます。犀川と伏見川の合流地点付近では、居住地は堤防の高さよりも3メートル程低くなっています。犀川の水位が高くなった場合、居住地にたまった水は犀川へ排水できなくなり、逆に犀川からの逆流を防ぐ為、水門を閉鎖しなければなりません。そのときは、内水を排除するため、ポンプ施設が必要となります。
堤防外にたまった水を自然排水で犀川に排出するためには、犀川の水位を相当下げなければなりません。辰己ダムができたとしてどれくらい水位を下げることができるのかという質問に、昨年の台風7号の場合で、辰己ダムによって下げることのできる水位は30センチメートルであると県は答えています。辰巳ダムが高畠地区の水害対策にほとんど役に立たないことはこれで明らかです。にもかかわらず、県や金沢市が辰巳ダム建設に固執して高畠地区の内水の水害対策を十分におこなってこなかったことが、この地域での水害を大きくしたのではないでしょうか。
水害から市民の安全を守るためにも、県や金沢市は辰巳ダムに固執することをやめるべきです。
(3) ゼネコンのための辰己ダム計画
県当局は、なぜ、貴重な文化遺産や自然環境を破壊してまでダム建設を強行しようとしているのでしょうか。
辰己ダム建設計画が県議会ではじめて明らかにされたのは1975年当初県議会です。主な目的は金沢市民の生活用水の確保でした。ところが、この時期に巨大な手取川ダムの工事完成が近づき、金沢市の水道用水は手取川ダムから取水することになりました。生活用水の確保という目的は宙にういてしまったのです。そのため、辰己ダムは、「治水ダムに目的変更」されることになりました。ダム建設計画だけが残り、後から別の目的が追加されていったとしか考えられません。
また、最初地元住民が要望していたのは「橋をかけてほしい」ということだったが、橋では国の補助金が少ないというのでダム建設計画に変わっていったといいます。
辰己ダム計画は、金沢市民や地元住民のためでなく、ゼネコンのための公共事業であることは明らかです。このようなダム建設に数百億円という県民の金(県は辰己ダムの総事業費は123億円だといっていますが、このあと数百億円にふくれあがることは確実)をつかい、しかも辰己用水という貴重な文化遺産や自然環境を破壊することは許せません。
3. 辰己ダム問題についての日本共産党の提案
以上のように、辰巳ダム建設は、辰巳用水や自然環境を破壊するだけでなく、治水対策という点からみても金沢市民の願いに逆行するものです。全国的には原発立地や開発問題で「住民投票条例」の制定・実施にまで運動が広がっているところもあります。そういう先進的な運動にも学びながら、日本共産党は現在の到達点にたって、次の点を提案するものです。
(1) 公共事業評価監視委員会の「付帯意見」を県にまもらせる
石川県公共事業評価監視委員会は犀川・浅野川をふくめた流域全体の総合的な治水対策、環境対策、辰己用水についてはダム建設により影響を受ける区間はできるだけ復元や移設等のつとめることなど「付帯意見」として五点をあげています。県にたいしてこの五点を厳格に守るよう求めるとともに、日本共産党としてつぎのような提案を行うものです。
(2) 辰己用水を保存し、豊かな自然環境を守る
辰己用水と東岩取水口を現状のまま保存し、国の重要文化財に指定して兼六園・金沢城址とともに金沢の歴史的文化遺産として残します。辰己用水の維持・補修のための費用を県と金沢市で補助します。
(3) 建設計画は中止し、ダムにたよらない洪水対策、河川管理のあり方を検討する
・ 大雨のときの水量の予測は科学的なデータと手法によってやり直し、内川ダム、犀川ダム、
浅野川放水路をふくめた治水対策を立てます。犀川大橋地点が水害対策上のネックになる
場合は、拡幅も含めて対策を検討します。
・ 犀川とその支流の集水域での乱開発をふせぎます。森林、耕地の保全し、保水能力を高めま
す。
・ 高畠地内の水害対策を立てます。そのために、高畠地内での遊水地の確保、ポンプ排水設備
の整備などの対策をたてます。
・ 犀川本流の渇水期の水量維持、辰己用水の水量維持のために対策を立てます。
・ 相生谷から対岸への交通の利便をはかるため道路および橋の整備を進めます。
以上
○辰巳ダム問題についての日本共産党の提案 1999年12月